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【タックル法律講話】「食品テロ」の脅威! わざと農薬を混入しても、たったの「懲役三年以下」? 軽すぎる刑は、犯罪の抑止力になりません。

2014/03/15

「食品テロ」の脅威!

わざと農薬を混入しても、たったの「懲役三年以下」?

軽すぎる刑は、犯罪の抑止力になりません。


容疑は「偽計業務妨害罪」


昨年末から世間を騒がせた、マルハニチログループの株式会社アクリフーズ群馬工場における農薬マラチオン混入事件。一月二十五日、群馬県警が、「偽計業務妨害罪」の容疑で、契約社員の阿部利樹容疑者(四十九歳)を逮捕しましたね。容疑は、昨年十月頃、四回にわたって、工場で製造された冷凍食品に農薬を混入し、工場の操業を停止させて業務を妨害した、というものです。

今回は、異臭に気づいて食べた人も少なく、健康被害も軽度で済んだからよかったものの、一歩間違えれば被害は甚大なものになる危険性もあったわけですから、ある種の「食品テロ」とも言えますね。
聞き慣れない「偽計業務妨害罪」という犯罪ですが、これは、暴力(有形力)、風説の流布以外の方法で、たとえば、騙したり、こっそりと操作するなどして、  人の業務を妨害した場合に適用されます。法定刑は「三年以下の懲役または五十万円以下の罰金」です。

今回の事件では、「人を傷つけたり、殺そうという意図はなかった」ということで、傷害罪や殺人未遂罪での立件は困難だったようです。傷害罪であれば「十五年以下の懲役または五十万円以下の罰金」、殺人罪であれば「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」です。

人の口に入る食品に毒物を混入するという行為は、非常に恐ろしい行為であり、結果の重大さを考えると、「三年以下の懲役または五十万円以下の罰金」という偽計業務妨害罪では、あまりにも刑が軽過ぎますね。

しかし、現行では、取り締まる法律がないため、これが限界なのです。


株価操作に悪用?


もし、こうした「食品テロ」が企業の株価操作を狙ったものだったらどうでしょうか?推理小説みたいな話かもしれませんが、あながち考えられなくもありません。「三年以下の懲役または五十万円以下の罰金」であれば、刑期も極めて短いですから、出所後に多額の報酬を約束されれば、引き受ける人間も出てくるかもしれません。

また、最近では、ペーパー会社が、ウソの投資話で莫大な資金を集めて、計画的に会社を倒産させる、という手口も横行しています。仮に、詐欺罪で立件されても「十年以下の懲役」です。うまくいって懲役七年ぐらいで出所して、隠しておいた数億円を手にできるのであれば、悪くない稼ぎだとも言えます。

いずれにせよ、日本の犯罪の法定刑があまりにも軽すぎて、犯罪の抑止力になっていないような気がします。

残念ながら、日本における高い道徳心、遵法精神が希薄になり、以前には考えられなかった形態の犯罪が出現し、被害が拡大している今、各種犯罪の法定刑を見直すことも必要ではないでしょうか。それでは次号で!