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【タックル法律講話】何でもかんでも「残業代払え!」では、日本企業は潰れてしまう? 労働基準法の理想と現実がかけ離れているのでは…。

2014/06/15

何でもかんでも「残業代払え!」では、日本企業は潰れてしまう?

労働基準法の理想と現実がかけ離れているのでは…。

労働基準法の理想と現実

ここ数年、労働問題の相談を受けることが多くなりました。特に経営者側から、「残業代の未払いで従業員に訴えられている」という相談が増えました。

労働基準法上は、勤務時間を一分でもオーバーすれば残業代が発生します。しかし、この不景気の中、現実に従業員全員が九時から五時までしか働かないような会社は存続できるのでしょうか?

最近、「ブラック企業だ!」とネットで名指しされる企業が多いようですが、そもそも「ブラック企業」の定義が曖昧ですし、何でもかんでも「ブラック」の烙印を押すことには違和感があります。たしかに、何十時間も残業させ、過酷なノルマで従業員を精神的に追い詰めるような企業もあるとは思いますが、多くの中小零細企業は、少ない利益で何とか頑張っている、というのが現実だと思います。労働を「時間」だけで捉えることも善し悪しです。時間だけ潰されて成果どころか最低限の目標もクリアできていないのに賃金を支払っていたら、企業は倒産してしまいます。

特に、「技能職」の場合は、技術の向上に多くの時間が必要です。例えば、美容室の若手スタッフは、閉店後に自分の技術を磨くためにマネキン人形を使ってカットの練習をします。しかし、これも「勤務時間外だから残業代を払え!」と訴えられるケースが増えてきました。料理人、飲食店などでも同様の問題が生じています。最近では、若い弁護士が残業代を求めて訴訟提起したというニュースもあり、ビックリしました。

これとは反対に、例えば、トラック業界では、働き盛りのドライバーは、長時間働いてでもいっぱい稼ぎたい、企業としてもそうしてもらいたいけど、労働基準法などの規制があるために長時間働かせられない、という問題も生じています。要するに、労働基準法の理想と現実が大きくかけ離れているのです。そろそろ、現実を見据えた議論すべきだと思います。

「労働」に対する価値観の違い

また、今の日本は、休みが多過ぎます。祝祭日に加えて振替休日を作ったり、いつの間にか完全週休二日制になったり。以前は、土曜日は「半ドン」といって午前中は働いていました。労働時間は一九八〇年代後半に外圧で短縮されました。折からのバブル景気で日本人の間にも「働き過ぎはよくない」という風潮もありました。しかし、日本は資源に乏しい国ですから、「良質な労働力」しか資源はありません。これを制限する動きは日本の国力をわざと削ぐ意図があるのではないか?と疑いたくもなります。

そもそも、日本と西洋とでは「労働」に対する価値観が全く違います。日本では「働くことの中に悟りを見出す」という価値観があり、働くことに喜びを感じますが、西洋では「人間が罪を背負ったことによる苦役としての労働。神様が与えた罰」なのです。ですから、西洋的な価値観・制度に変えること自体が無理があるのです。日本企業の強さは、終身雇用などの家族的経営にありました。「従業員は家族」なのです。しかし、仕事が終わって社長さんを囲んでの飲みニケーションも「残業だ!」となれば、そうした日本企業の強みは削がれてしまいます。今、日本的価値観の再構築が必要ではないでしょうか。それでは、次号で!

ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2014年6月