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【タックル法律講話】 格安タクシー会社が国の値上げ強制に物申す! 「規制」と「規制緩和」の意義について考えてみましょう。

2015/02/15

格安タクシー会社が国の値上げ強制に物申す!

「規制」と「規制緩和」の意義について考えてみましょう。


国の値上げ強制は違法!


国が決めた運賃よりも安い運賃で営業している福岡市の「パンダタクシー」(青柳竜門社長)が「運賃の値上げを強制する国の命令は違法だ!」として争っていた裁判で、先日、福岡高裁は、国側の主張を退ける決定を出しました。

福岡高裁は「国が規制すべきなのは、運転手の歩合制賃金を前提とした過度の運賃引き下げであり、パンダタクシーのように予約客中心の配車システムによる高い実車率で利益を確保し、固定給制度を導入している会社に対して、運賃値上げ命令を出すことは、事業者の実情を考慮せず、裁量権の範囲を逸脱しており、違法である。」と判示しました。

タクシー大手「エムケイ」(京都市)などが行った同様の裁判でも、国側の主張は認められませんでした。

国の規制は、一昨年に成立した改正特措法によるもので、下限よりも安い運賃を禁止しており、違反すれば国が値上げを勧告し、拒否すれば料金変更命令や営業停止という厳しい処分が課せられます。利用する側としては、タクシー料金は安い方がいいに決まっていますが、国としては「安すぎてはいかん!」ということなのです。
今回の裁判は、そのようなお上(国)の規制に対し、地方の格安タクシー会社が反旗を翻し、勝利を勝ち取ったことになります。


「安かろう、悪かろう」か、自由競争か?

もともと、タクシー業界は「同一地域、同一運賃」で価格競争が起きにくく、また、厳しい規制によって新規参入が難しい状況でした。
しかし、小泉政権の規制緩和によって、新規参入が増えて価格競争が起き、「初乗り500円!」などの安い運賃のタクシーが登場するようになりました。

一方で、活発な競争のしわ寄せが歩合制で働くタクシー運転手に及ぶことから、徐々に、「運転手の労働環境が悪化し、その結果、安全な旅客運送が困難になる」という声が大きくなってきました。これが、国の規制強化に至る流れです。
しかし、国の行き過ぎた干渉には問題があります。「安い運賃」という利用者のメリットを損なってなりません。

一方で、タクシーは人命を運ぶ交通機関ですから、安全体制は磐石でなくてはなりません。値下げなどの過当競争でタクシー運転手にしわ寄せが及び、客の奪い合い、長時間労働、また、会社が車の安全点検にコストをかけなくなる、など「安かろう、悪かろう」になる恐れもあります。実際、格安タクシー会社の中には、残業代や賃金を巡る訴訟を抱えている会社もあります。
そんな中で、今回のパンダタクシーやエムケイは、「予約客中心、固定給制」など、かなりしっかりとした企業努力をしていると言えます。
なかなか結論が出しづらい問題ですが、結局は、何のための「規制」または「規制緩和」なのか?を見極める必要がありますね。国民が「規制」の意義についてしっかり意識すべき時期に来ているのではないでしょうか。それでは次号で!


ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2015年2月