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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム10月6日(木)掲載されました。
2016/10/06
10月6日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「容認できない 日弁連の「死刑廃止」宣言」が掲載されました。
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容認できない 日弁連の「死刑廃止」宣言
「死刑」制度は廃止すべきか?賛否両論あるが、内閣府の世論調査によれば、「死刑はやむを得ない」との回答は約8割もの大多数に上り、「廃止すべき」の1割を大きく上回っている。これが現在の日本国民の率直な民意といえるだろう。
これに対して、日本弁護士連合会(日弁連)は、今月7日、福井市で開催される「人権擁護大会」において、明確に「死刑廃止」を宣言する予定である。2020年までに死刑を廃止し、代わりに「終身刑」の導入を提言するという。「国際社会では死刑廃止が大勢となっている」「冤(えん)罪(ざい)で死刑が執行されると取り返しがつかない」などが死刑廃止の主な理由である。
しかし、あまり説得力はない。自国の刑罰をどう定めるかはその国の歴史・文化・国民感情に根差すものであって、日本には日本独自の「けじめ」をつける刑罰観がある。ことさらに国際社会に同調する必要はない。
「冤罪」についても、神ならぬ人間が行う裁判である以上、冤罪の可能性がゼロになることはあり得ない。死刑囚だけに冤罪があるわけではない。また、「精密司法」と呼ばれる慎重かつ緻密な刑事裁判手続を誇る日本と、独裁国家や「逮捕、即死刑」のような未熟な手続・人権概念しかない国々とを同列に論じることもできない。
さらに、犯罪被害者の遺族の多くは、「加害者に死をもって償ってほしい」「被害者の無念に報い、遺族がけじめをつけるためにも死刑は必要である」と訴え続けている。このような「被害者・遺族の人権」の視点は不可欠である。
かように賛否両論ある「死刑」について、議論すること自体は大いに結構なことだと思う。しかし、問題は、全ての弁護士が加入を義務付けられた強制加入団体である日弁連が、このような特定の思想・立場を表明することが許されるのか?ということである。
死刑に対する考え方は、個人の思想・良心や人生観に深く関わる問題であり、そもそも、弁護士自治や弁護士業務とは無関係な「目的外の行為」である。「死刑賛成」という弁護士も多数いるわけだから、そのような個人の思想・良心に関わる事柄について、あたかも全ての弁護士が「死刑廃止」を求めているかのような宣言を出すべきではない。どうしても「死刑廃止」を主張したいのであれば、強制加入団体としての宣言ではなく、任意で賛同者を集めてやるべきである。「安保法制反対」「脱原発」などの会長声明もしかりである。
しかも、この「人権擁護大会」は、日弁連のイベントとして毎年開催されてはいるものの、ほとんどの弁護士は関心がないため、参加者が1千人に満たないこともある。全国約3万7千人の弁護士のうちわずか数%に過ぎない。さらには、参加できない場合も委任状による議決権行使が認められていないため、開催地(昨年は千葉、一昨年は函館)に足を運んだ人しか意思表示ができない。したがって、今回の「死刑廃止」宣言も、ごくわずかな一部の弁護士による意見表明でしかないのである。
このような「弁護士自治」の矩(のり)を踰(こ)えた、特定思想に偏った宣言や会長声明を続けていれば、「弁護士会」という組織そのものに対する国民の信頼は失われていくであろう。日弁連は、そのことに思いを致すべきである。
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