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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム12月1日(木)掲載されました。
2016/12/01
12月1日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「朴政権騒動から見える「情治国家」」が掲載されました。
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朴政権騒動から見える「情治国家」
今、韓国は、朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友とされる女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)被告らの国政介入疑惑で大揺れである。崔被告らは職権を乱用し、複数の大企業に対して崔被告が支配する財団への出資を強要し、774億ウォン(約72億円)を不正に集めたとされている。朴大統領は、国民からの激しい退陣要求もあり、「国民の皆様に百回でも謝罪を申し上げる」として事実上の辞意を表明した。
事件の真偽、朴大統領の関与はひとまず置くとして、この国家的大騒動の中で、いかにも韓国らしい出来事が起こっている。すなわち、韓国野党が、崔一家らが国政に介入して不正な蓄財をしていたとして、崔一家らの財産を没収する「特別法」を制定しようとしているのである。「崔一家及び反逆者の国政壟断犯罪とそれによる違法収益を没収し、民主主義秩序を守護する」という趣旨だそうだ。「政権とのコネを使って莫大(ばくだい)な財を築いた崔一家は絶対に許せない!」との国民の怨念が渦巻いている。
しかし、このような特別法は、近代法治国家における大原則である「事後法の禁止」(遡及(そきゅう)処罰の禁止)に明らかに反している。「事後法の禁止」は、行為後に作られた法律によって過去の行為を処罰することになれば、国民は自己の行為が処罰されるか否かについての予測がつかず自由な行動が阻害されてしまう、という自由主義の要請に基づくものである。日本国憲法第39条にも「何人も、実行の時に適法であった行為については、刑事上の責任を問われない」と規定されている。
ところが、韓国では、平然と事後法が制定される。その典型例が2005年に成立した「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」(親日派財産没収法)であろう。この法律は、時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が推し進めていた過去清算政策の一環であり、「日本帝国主義の殖民(しょくみん)統治に協力し、わが民族を弾圧した反民族行為者が、その当時、蓄財した財産を国家の所有とすることで、正義を具現し、民族精気を打ち立てることを目的」としている(第1条)。日露戦争開始前から韓国独立前までの間、いわゆる親日派といわれる人物たちに「反民族反国家行為」があったとして、その財産を没収するというものである。親日派認定を受けた本人はその多くが死亡しているため、対象となるのはほとんどがその子孫であり、60年以上も前の出来事を理由に、突然、財産を没収されてしまうのである。恐るべき事後法である。韓国の憲法にも事後法を禁止する規定があるにもかかわらず、一体、いかなる根拠でこの親日派財産没収法が合憲だと解釈されているのだろうか?近代的な法の支配の観点からは全く理解不能であり、韓国が「法治国家」ではなく、国民感情が優先する「情治国家」と言われる所以(ゆえん)である。
慰安婦問題、元徴用工による日本企業への賠償請求訴訟、対馬の仏像返還問題など、韓国の情治国家ぶりは今に始まったことではないが、今回の崔一家に対する特別法制定の動きを目の当たりにすると、改めてその異常さに嘆息させられる。仮にこの特別法が制定されれば、国際社会に未熟さをさらけ出すだけだ。日本と韓国が法治国家としての価値観を共有するには、まだまだ道のりは遠そうである。
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