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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム12月28日(木)掲載されました。
2017/12/28
12月28日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「「北」による拉致被害 子供たちに伝えよ」が掲載されました。
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「北」による拉致被害 子供たちに伝えよ
平成29年の世相を表す「今年の漢字」には、「北」が選ばれた。北朝鮮のミサイル発射や核実験、九州北部豪雨、北海道日本ハムの選手の活躍などが理由だそうだ。
しかし、忘れてはならないのは、北朝鮮による拉致被害である。被害者はいまだに帰国できず、何ら解決していない。去る12月12日、福岡県行橋市の笹山忠則教育長が、市議会において、拉致被害者・横田めぐみさんのドキュメンタリーアニメ「めぐみ」を学校で上映しない理由を問われ、「(在日韓国・朝鮮人への)いじめが起きる懸念を排除できない」と答弁した。耳を疑う答弁である。
18年に公布された「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(北朝鮮人権侵害対処法)は、「国民的な課題である拉致問題の解決をはじめとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が国際社会を挙げて取り組むべき課題であることにかんがみ、国民の認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、及びその抑止を図ること」を目的としたものである。そして、国は「国家的犯罪行為である拉致問題を解決するため、最大限の努力をするもの」とされ、地方公共団体に対しても、「国と連携を図りつつ、拉致問題等の人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとする」と定めている。
このように、地方公共団体においても拉致問題に積極的に取り組むべきとされているにもかかわらず、公布から10年以上たった今でも、教育現場における拉致問題への取り組みが極めて消極的である事実が、浮き彫りとなった。しかも、ビデオ「めぐみ」は政府が教育現場での活用を推進してきたものであり、なおさらである。
さらに、上映しない理由として、「いじめ」を挙げること自体、不適切・不謹慎である。拉致問題は、犯罪行為・人権問題であり、その啓発に取り組むことが「いじめ」を誘発するなどといわれてしまえば、拉致被害者やその家族の怒りや無念さは計り知れない。笹山教育長は、「不適切だ」との指摘を受けて発言を撤回したが、それで済む問題ではない。
私は、今回の笹山教育長の答弁を聞いて、思い出したことがある。約10年前、警察が制作した暴力団排除ビデオの学校での上映について、某市の教育委員会に対し、暴力団側から「組員の子供に対するいじめを誘発する可能性があるから、上映しないように」との申し入れがあり、教育委員会が上映しないことを決めた、というニュースである。真偽のほどは不明だが、仮にそのような事実があったとすれば、今回の件と根は同じであろう。
拉致問題にせよ、暴力団対策にせよ、犯罪行為や人権侵害の事実、そして、人間として許されないことについて、子供たちにしっかりと伝え、考えさせることは大人の責務である。その責務を放棄し、しかも、「いじめ」を理由に「事なかれ主義」を決め込んではならない。
被害者の家族が高齢化し一刻の猶予も許されない今こそ、国や地方公共団体は、北朝鮮人権侵害対処法の理念を再確認し、未来を担う子供たちに対して真実を伝える努力をしてほしい。
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