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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム5月28日(木)掲載されました。

2015/05/28

5月28日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「「世界遺産」に頼らない日本独自の価値観を」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

「世界遺産」に頼らない日本独自の価値観を

先日、「明治日本の産業革命遺産」(九州・山口を中心とした23施設)が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産の登録勧告を受けましたね。最終的には7月にドイツで開かれる世界遺産委員会で登録の可否が決まります。

これに猛反発しているのが韓国です。「産業革命遺産」の中の八幡製鉄所、三菱長崎造船所などで、さきの大戦中に朝鮮人労働者が強制労働させられており世界遺産の精神に反する、と言うのです。朴槿恵大統領は世界各国に向けて日本の登録阻止を訴え、相も変らぬ「反日」外交を展開しています。

しかし、この「産業革命遺産」は、江戸時代末期から近代化を成し遂げた明治末期までのことであって、さきの大戦中は含まれませんから明らかな韓国の言いがかりです。「反日」は韓国の国策ですから仕方ないとしても、さすがにウンザリしますね。

ただ、韓国の言いがかりは置いておくとしても、昨年の富岡製糸場など、最近の日本における「何でもかんでも世界遺産に!」という風潮には違和感を覚えます。世界遺産に登録されることはメリットばかりではありません。莫大(ばくだい)な維持費、来訪者の激増による渋滞、騒音、排気ガス、マナー違反による被害の数々(ゴミ、落書き、近隣トラブル)、滞在施設の増加による景観の悪化、外部資本による周辺開発など、多くのデメリットもあります。

実際、2年前に世界遺産に登録された富士山では、売店や自動販売機が立ち並び、ゴミ、排泄物、不法投棄のヤマなど、景観・環境破壊が深刻な問題となっており、このままでは登録抹消の危機にもさらされかねません。

また、今回の日本国内での選定の経緯も分かりにくいものでした。もともとは、長崎県・長崎市が強く推していた文化庁推薦の「長崎教会群とキリスト教関連遺産」が本命視されていましたが、一昨年秋ごろから官邸主導で内閣官房推薦の「明治日本の産業革命遺産」が候補に挙がってきたのです。各国の推薦枠は1つしかありませんから、両者が激しく争った結果、最終的に菅義偉官房長官の強い推しもあって「産業革命遺産」に決まる、という異例の展開となりました。成長戦略を掲げる安倍政権としては、既に完成された「長崎教会群」よりも、観光施設のインフラ整備などで大きな経済効果が見込める「産業革命遺産」にメリットがあるということなのでしょう。

また、「産業革命遺産」には長崎市の軍艦島(端島炭鉱)も含まれていますが、保存のためには約150億円かかると言われており、地元長崎も頭を抱えています。地元の重い負担が無視できない世界遺産というのも考えものですね。

さらに、23施設のリストのうち、ほとんどは製鉄所、炭鉱など近代産業施設であるのに何故か、長州の「松下村塾」が入っています。世界遺産の目的である「普遍的な価値を有する遺産を人類全体の財産として保護すること」からすると、政治的な思惑が見え隠れしているように思えてなりません。

こう考えると、そろそろ、日本は、「世界遺産離れ」をすべき時期ではないでしょうか? 今回の勧告は、「西洋から非西洋国家に初めて産業化の伝播(でんぱ)が成功したことを示しており、普遍的価値がある」と評価されたものですが、日本が西洋に追随したことを評価されても、もろ手を挙げて喜ぶ気にはなれません。それまでの日本的なものを覆した「明治維新」というものを、われわれ日本人が検証し、総括するという作業が不足しています。安易に「世界遺産」に頼るのではなく、日本独自の価値観に基づいて、日本人にとって本当に大切な遺産を守っていく、そのためにはどうしたらいいのか、という視点と議論が必要だと思います。

 
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