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【タックル法律講話】「司法書士は140万円を超える案件は扱えない」 弁護士会vs司法書士会の争いに、最高裁が終止符?!

2016/08/17

「司法書士は140万円を超える案件は扱えない」
弁護士会vs司法書士会の争いに、最高裁が終止符?!


平成14年の「司法書士法」の改正

先日、最高裁は、過払い金の対応などの債務整理でいくらまでなら司法書士が弁護士の代わりに引き受けられるかが争われた裁判で、「借金の額が140万円を超える場合、司法書士は代理できない」との初判断を示しました。これまで、弁護士会側は「債務総額が140万円超なら司法書士は担当できない」と主張し、一方の司法書士会側は「債務の圧縮等で依頼者が実際に受ける利益が140万円以下なら総額が140万円超でも司法書士は担当できる」と主張していました。この最高裁の判断によって、弁護士会側の主張が確定したことになります。
もともと、訴訟は弁護士しか担当できなかったのですが、司法書士が自分たちの職域を広げようと猛烈な政治活動を展開し、ついに平成14年に司法書士法の改正にこぎつけ、140万円以下の簡裁訴訟案件に限っては司法書士も担当できることになりました。これをきっかけに弁護士が独占してきた債務整理業務に司法書士が進出し、これに反発する弁護士会との間で「士業団体」の対立が続いていました。
平成14年当時はまだ法曹人口を増やす司法改革が始まっていない頃で、「弁護士は安い案件には手を出さない。庶民の味方ではない。司法書士こそ庶民の味方だ!」というキャンペーンがはられ、司法書士会の政治活動・政治献金攻勢に負けて、一気に改正されてしまいました。弁護士会の政治的敗北とも言えます。その後は、宣伝上手の司法書士が債務整理や過払い請求を大々的に宣伝して案件を根こそぎ取っていきました。


結局はどちらが国民のためになるのか?

しかし、司法書士の本来の業務は登記業務です。140万円以下という額は小さくても裁判は裁判ですから、いい加減なことはできません。残念ながら、司法書士は弁護士とは違って訴訟手続の専門的トレーニングを受けていませんし、訴訟能力にも疑問があります。また、弁護士会のように懲戒制度も厳しくありませんから、一部では、いい加減な対応や法外な報酬請求も多かったようです。
こうした司法書士による対応は、結局は依頼者の不利益に繋がります。だからこそ、高度な法律知識を持った弁護士に訴訟業務を独占させる弁護士法があるわけですが、それを「金額が小さいから、まあいいだろう」ということで、安易に司法書士に訴訟代理権を与えてしまったことに問題があります。
司法書士が簡易裁判所の案件を扱えるようになった平成14年頃は、弁護士側もまだ「余裕」があったかもしれませんが、結局は、その後の法曹人口増加策で弁護士が激増し、食えない弁護士が増えてきて、気付いたら債務整理案件が根こそぎ司法書士に持っていかれてしまっていた、というのが現実です。そこで慌てて、弁護士会側も司法書士が取り扱える範囲を出来る限り限定させようという動きに出ているのです。
業界団体による職域の争いとも言えますが、結局は、どのような法制度を作り、どのような専門職に裁判を担当させるのが国民の利益に沿うのか、という視点を忘れてはなりませんね。それでは次号で!