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【タックル法律講話】「外れ馬券」は必要経費?! 「ギャンブルが仕事」と言われると、違和感がありますが…

2015/07/17

「外れ馬券」は必要経費?!
「ギャンブルが仕事」と言われると、違和感がありますが…


「一時所得」ではなく「雑所得」

先日、インターネットで大量に購入した馬券の払い戻し金を申告せずに所得税約五億七千万円を脱税したとして所得税法違反に問われた男性(41)の最高裁判決が出ましたね!
最高裁は、男性の購入手法を「営利目的の継続的行為」として「雑所得」にあたるとし、大量の外れ馬券の購入費を所得から控除できる「必要経費」と認めました。男性は、競馬予想ソフトを使用して、ネットで三年間で約二十八億七千万円もの大量の馬券を購入し、そのうち約一億三千万円分の当たり馬券で約三十億一千万円の払い戻し金を得ていました。
最高裁は、この払い戻し金を、「一時所得」ではなく「雑所得」であるとし、約二十七億四千万円の外れ馬券の購入費を「必要経費」として認めたのです。その理由は、「独自の条件設定や計算式を使い、的中に着目しない網羅的購入を行った」ということです。つまり、営利を目的とした継続的な行為から生じた「所得」であるから、一般の「事業」や「仕事」で得た所得と同じである、という理屈です。
「ギャンブルが仕事?」と思われるかもしれませんが、競馬は公営ですから合法です。「デイトレーダーやFXのように機械的に投資することと同じ」という判断は、理論的には、ある意味スッキリとはしています。


競馬の本質は賭博のはずだが・・・

しかし、競馬の本質は、あくまでもギャンブルですから、それから得る所得は、働かずして得た「不労所得」です。実際、検察側も、「競馬の本質は賭博であり、勝敗は偶然の事情であり、各競走は独立したものだから、いくら繰り返されても、継続的行為とはならない」と指摘していました。
しかし、最高裁は、「賭博であって射幸性を有することは、営利性や継続性といった要件を否定するものではない」、「外れ馬券を含む購入がなければ、払い戻し金を得ることができなかったのだから、外れ馬券の購入費も払い戻し金を得るための「必要経費」に当たる、と判断しました。
しかし、このような判断は、突き詰めると、ヤクザが賭場を開くのは違法ですが、賭場で上がった利益を得るのは営利性と継続性があれば「必要経費」として認められる、ということにもなりますね。社会風紀を乱すギャンブルに「必要経費」を認めるというのは、日本人のまともな感覚からすると、かなり違和感があります。
とはいえ、例えば、大量にばらまく営業チラシやDMも、確率が低いビジネス手法ではありますが、それは百パーセント必要経費として認められているわけですから、それとどう違うの?という疑問も成り立ちますよね。
結局、裁判所としては、「男性の行為は賭博行為ではあるが、一種の投機である」との判断が精一杯だったのでしょう。インターネットや予想ソフトを利用して継続的に大量購入する同様の手法は競馬以外の公営ギャンブルにも広まっており、今回の判決が国税当局の課税判断に影響を与えるのは間違いありませんね。それでは次号で!