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【タックル法律講話】弁護士らが「国から借りたお金が返せないので、待って欲しい!」 食えない弁護士の増加、能力の低下・・・。 司法改革の歪みがハッキリと現れています!
2018/08/03
弁護士らが「国から借りたお金が返せないので、待って欲しい!」
食えない弁護士の増加、能力の低下・・・。
司法改革の歪みがハッキリと現れています!
「給費制」から「貸与制」へ
以前は、法律家の卵である司法修習生には、修習期間中、国から月額約二十万円の給料が支給されていました(給費制)。
ところが、司法改革の名のもとに、二〇一一年度採用の司法修習生(第六十五期)から「給費制」が廃止され、希望者に資金を貸す「貸与制」となりました。ところが、さらにその後の見直しで七十一期からは月額十三万五千円を給付する「給費制」が復活しました。そのため、「貸与制」だった六十五期から七十期までの五期の司法修習生だけが、返済義務を負った「谷間世代」と呼ばれてきました。
「貸与制」の平均利用額は計約三百万円。無利子で、修習終了五年経過後から十年年間で分割返還することになっていますので、月額に直すと二万五千円。「貸与制」の初年度である六十五期には約五十三億円が貸し出されましたが、前倒しでの返還は今年三月末現在で約七千三百万円しかなされておらず、最高裁は返還を求めていました。
ところが、いわゆる「谷間世代」だけが不利益を被ることは公平ではないとして、弁護士有志が最高裁に返還請求を撤回するよう求める申入書を提出したのです。
世間から見ると、弁護士が無利子で国からお金を借りておきながら、月二万五千円すらも返済できないので待って欲しい、と泣きついている状況です。
「食えない弁護士」が増えた背景は、司法改革によって司法試験合格者が一気に五倍にも増え、過当競争が起きているからです。「給費制」から「貸与制」になったのは、法曹人口が一気に増えたために給付額が膨れ上がったことによります。
たしかに、この谷間世代だけが返還義務を負わされることは可哀そうな気もしますが、一般的な感覚からすれば、「最初からそれが分かっていて司法試験を受けたんでしょ?何を今さら甘えてるの?」ということになり、理解は得られないでしょう。
法律家を育成するのは国家的事業
とは言うものの、国の根幹をなす「司法」を担う法曹人材ですから、国はもっとコストをかけてもらいたいと思います。弁護士は民間人ではありますが、「司法」という国家機能の一翼を担っているのは事実です。同じ修習生でも検事や裁判官の道に進んだ人は身分が保障された公務員ですから、返還できる余力があるのは当然です。
やはり本来、修習生期間は給費制であるべきです。例えば、国防を担う防衛大学校生は、在校中は特別職国家公務員という身分で学費は免除された上に、「学生手当」という名目で給与が支給されています。しかも、卒業後、民間企業などに就職する、いわゆる任官拒否をしても返還の義務はありません。
これに比べると、司法修習生の貸与金返還はいかにも条件が厳しいと言えます。
法曹人口の激増による過当競争で月額二万五千円の返還すらできない「食えない弁護士」の出現、わずか一年の修習期間で粗製乱造される能力の低い法律家たち。今回の「返金猶予」問題には、司法改革のしわ寄せが如実に現われています。
また、弁護士の数がいくら増えても裁判官や書記官の数はほとんど増えていませんので、裁判所の処理能力は上がらす、裁判の長期化も改善されていません。
法律家の養成は国の一大プロジェクトです。司法の質が低下すれば、国民の司法に対する信頼が揺らぐこととなり、そのツケは結局、国民に跳ね返ってきます。司法改革の早急な見直しが必要です。それでは次号で!