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【タックル法律講話】上川陽子法相、死刑執行命令は16人で過去最多! 法相の思想信条や感情で命令書に署名しない制度は いちはやく改正すべきです

2018/09/04

上川陽子法相、死刑執行命令は16人で過去最多!
法相の思想信条や感情で命令書に署名しない制度は
いちはやく改正すべきです

過去最高の十六人を執行

一九八九年から九五年にかけて発生したオウム真理教事件で死刑が確定した麻原彰晃(松本智津夫)をはじめ十三人の死刑囚の死刑が執行されましたね。上川陽子法務大臣は、このオウム事件以外にも三人の死刑を執行したので、合計十六人の死刑執行命令書に署名したことになります。
これは、法務省が死刑執行を公表するようになった九八年以降で最多の執行数です。それまでの最多は二〇〇七年八月から約三百四十日間、法相を務めた故鳩山邦夫氏の十三人でした。
刑事訴訟法では、「死刑の執行は法務大臣の命令による」と定められており、執行の最終判断は法相が下します。逆に言えば、法務大臣が死刑執行命令書に署名(命令)しない限り、いつまでも死刑は執行されません。
在任期間中に死刑執行を命じなかった法相は九人。例えば、杉浦正健(せいけん)氏は、就任会見で「死刑執行のサインをしない」と明言し、その後直ぐに「個人の信条を吐露した」と撤回しましたが、結局、約三百三十日の在任期間中、執行はゼロでした。また、江田五月氏は「悩ましい状況に悩みながら勉強している最中。悩んでいるときに執行とはならない」と死刑執行を躊躇し続けました。
それまで最多だった鳩山氏は「斎戒沐浴(さいかいもくよく)して(死刑囚に関する)記録を読む心境は穏やかではないが、社会正義実現のためにやらざるを得ないという思いでやってきた」と述べ、「死刑執行は法相としての責務」と強調しました。「いろんな倫理や宗教観などで死刑執行しない人は、絶対に法務大臣になるべきでない」と語っています。

法の下の平等

死刑執行の最終決断を下すべき法相が署名しない限り、いつまでたっても死刑にならないということ自体、とてもおかしなことだと思います。自分の思想信条や気持ちで署名をしないのは、法相としての責務を果たしておらず、署名したくないのなら、法相に就任すべきではありません。署名しなかった大臣をヒューマニズムに溢れていて人権を大事にする人物であるかのように持ち上げる風潮には違和感があります。

問題の根元は、あやふやな刑事訴訟法の規定です。「法務大臣は、死刑確定後●●日以内に死刑の執行を命じなければならない」とするなど、命令に期限を設ける改正をすべきです。法相が署名しない限り死刑が執行されないということになると、他の死刑囚との間で「法の下の平等」は担保できません。
オウム事件では、松本死刑囚は死刑確定後、実に十二年もの年月が経ってからの執行です。あまりにも遅すぎます。その間の遺族の方々の気持ちはどうなるのでしょうか。
たしかに、死刑囚の中には無実・冤罪もあり得ますので、再審制度の問題は残ります。法相としても、再審請求がなされている間は死刑執行を躊躇しますので、死刑執行を延ばすために再審請求がなされることが多いというのも現実です。実際、オウムの死刑囚も一人を除いて全員が再審請求を出していました。冤罪を防ぐための再審制度ではありますが、再審請求に期限を設けるなどの工夫も必要です。いずれにしても、「法の下の平等」の観点からは、今の死刑執行のあり方は見直すべきでしょう。それでは次号で!