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【タックル法律講話】山形県弁護士会が犯罪加害者の「家族」に法的支援! 追い詰められた家族にとって、「救いの手」となるでしょうか?

2018/11/06

山形県弁護士会が犯罪加害者の「家族」に法的支援!
追い詰められた家族にとって、「救いの手」となるでしょうか?


「家族」を自殺に追い込む異常性

山形県弁護士会が全国の弁護士会で初めて犯罪加害者の「家族」の支援に乗り出しました。犯罪加害者の「家族」が社会的に孤立するのを防ぐため、相談窓口を設けるほか、会員弁護士に支援のための研修を受けさせる方針です。9月に「犯罪加害者家族支援委員会」を発足させ、支援に向けた動きを本格化させています。家族が転居や進学・就職の断念に追い込まれるケースもあり、転居の手伝いや、精神的ケアまで支援を拡大したい考えです。
犯罪加害者の「家族」は、その約9割が「自殺を考える」との報告もあります。 「犯罪者を生み出した家族も反省しろ!責任を取れ!」となりがちです。ネットには、家族の実名、住所、電話番号まで掲示され、いつまでも嫌がらせを受けるケースが後を絶ちません。
罪は加害者本人が犯したものであり、刑罰を受けるのも加害者本人ですから、その家族が社会的制裁を受けるのは、法律的にはおかしなことです。しかし、被害者側にしてみれば、「自分たちはこれだけ苦しんでいるのに、犯罪者の家族がのうのうと暮らしているのは許せない!」となりがちです。犯罪者を育ててしまった親や家族に対するそうした感情は、「親の顔を見てみたい」というよく使われる言葉が示す通り、なかなか消すことはできません。
それでも、加害者の「家族」が自殺を考える状況は異常です。もし、自殺してしまえば、不幸の連鎖は断ち切れません。思い出されるのは、2014年に起きた「佐世保女子高校生殺人事件」です。この事件では一人暮らしの女子高生が同級生を殺害し、その父親が事件後しばらくして自殺しました。父親は地元では有名な弁護士で、市長選に出馬しようかという人物でした。その反動もあってか、周囲から追い詰められての自殺だったのでしょうか。確かに、こうした娘に育ててしまった親としての責任は重たいものですが、自殺に追い込まれた背景にも問題があると思います。

「救いの手」は具体的な取組み

山形県弁護士会の具体的な取組みとしては、加害者家族だといって入居を拒否する大家に対して警告を出したり、学校でのいじめには学校への対応を促したり、就職差別があれば会社側に交渉したりするなどの支援が考えられます。また、肝心の情報元であるネット運営会社への削除要請もやるでしょう。また、「犯罪の背景となる家族を取材し、報道するのも役割だ!」と主張するマスコミの存在もあります。一種の「報道被害」と言えるでしょう。
同調圧力が強くなっている昨今の風潮からは、犯罪加害者の「家族」に対する圧力はますます大きくなっていくでしょう。「水に落ちた犬を叩く」という人間の醜さもあります。追い詰められた加害者の「家族」にとって、弁護士が相談に乗るという取り組みは一つの救済方法として注目していきたいと思います。それでは次号で!