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【タックル法律講話】ゴーン被告が十億円で保釈! 「否認」している中での保釈は極めて異例。 「人質司法」と言われる日本の刑事裁判に一石を投じました。

2019/04/02

ゴーン被告が十億円で保釈!
「否認」している中での保釈は極めて異例。
「人質司法」と言われる日本の刑事裁判に一石を投じました。


特別扱い的な(?)保釈

会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告が、保釈金10億円で保釈されました。帽子をかぶった作業着姿の変装が話題を呼びましたね。
昨年11月19日の逮捕以来、身柄の拘束は108日間に及びました。弁護側は2度の保釈請求をしましたが、いずれも却下されたため、今回、弁護団を交代し、「無罪請負人」の異名を持つ弘中惇一郎弁護士らが3度目の保釈請求をしました。
裁判所は、保釈を許可するにあたって、ゴーン被告が東京都内に住むこと、住居の出入り口などに監視カメラを設置すること、日産幹部ら事件関係者との接触を禁止すること、パスポートを弁護人が管理し海外渡航を禁止すること、パソコンや携帯電話の通信環境を制限すること、などを条件としました。
日本の刑事裁判は「人質司法」と批判されるように、保釈のハードルは非常に高く、裁判所はなかなか保釈を認めません。特に「否認」を続けているとなおさらです。しかも、ゴーン被告の事件は、まだ争点や証拠を絞り込む公判前の手続きが始まっていない段階であり、この段階で保釈が認められるのは極めて異例です。
今回の保釈の条件である「監視」をするのは弁護人であり、被告にとっては身内のようなものですから、罪証隠滅のおそれや関係者への働きかけが行わる可能性は否定できません。
今まで保釈を認めてこなかった裁判所の姿勢からすると、今回のゴーン被告の保釈は、何だか緩くて甘い、特別扱い的な(?)判断だな、と思います。
 

「人質司法」を見直すきっかけに

釈放されたゴーン被告は弁護士と自由に打ち合わせできて、ゴーン被告との共謀の疑いで逮捕され先に釈放された前代表取締役のグレゴリー・ケリー被告とも接触するかもしれませんから、検察の立場からすると、立件しにくくなるという「悪しき前例」になります。
一方、弁護人の立場からは、これをきっかけに保釈許可のハードルが下がる可能性がありますので、「人質司法」と言われる日本の刑事裁判に一石を投じる「良い前例」となるでしょう。
捜査機関としても、保釈が認められやすくなると、自白に頼り過ぎず、客観的証拠を積み重ねると地道な捜査をやらざるを得なくなります。
今回の裁判所の保釈許可の背景には、いわゆる「外圧」、つまり、勾留期間が長過ぎる日本の司法に対する海外からの批判があったかもしれませんが、「人質司法」を見直すきっかけになったと思います。それでは次号で!