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【タックル法律講話】宗教団体への公園の無償提供は違憲! しかし、政治信条・思想に利用される危険性もはらんでいます

2019/06/05

宗教団体への公園の無償提供は違憲!
しかし、政治信条・思想に利用される危険性もはらんでいます


「政教分離」で辛うじて違憲にはなったものの・・・

儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟」のため、那覇市が公園内の土地を無償で提供していることが憲法の政教分離の原則に違反するかが争われた住民訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は、一審に続いて「違憲」の判断を下し、市が使用料を請求しないことは違法としました。
裁判長は、廟の管理団体について、営んでいる祭礼行事の内容を踏まえ「宗教団体」と認定し、土地の無償使用は「特定の宗教に便宜を提供し、援助していると評価されてもやむを得ない」と述べました。その上で、原告の市民が監査請求した平成26年4~7月の使用料を請求すべきだと指摘しました。
もともとは、故翁長雄志氏が市長だった23年、市内の公園に廟の設置を許可して土地使用料の全額免除を決め、26年に更新しました。この廟の管理団体は「久米崇聖会」といい、琉球王朝時代に中国から来訪した帰化人(久米三十六姓)の子孫で作る「一般財団法人」です。事実上、他の血統には開かれていないクローズドな団体であるうえに、儒教にもとづく祖霊崇拝の宗教性・秘儀性などを考慮して、判決では「宗教団体」として認定されました。
この判決で特定の宗教団体が無償で公園を使うことが違憲とされたのはいいことですが、宗教だけではなく、特定の政治思想や信条を示す行為も許されるはずがありません。市民が知らない間に利用される可能性もあると思います。
実際、飯塚市のように市有地である霊園内に「朝鮮人慰霊碑」が建っています。政教分離だけではなく、こうした利用にも規制をかけるべきです。

「公園」の定義の再確認を 

また、2年前に都市公園法が改正されたのも気になります。
保育所や学童クラブ、高齢者福祉施設などが加えられ、レストランも出店しやすくなりました。保育所、学童保育などは公共性が高いのでいいと思いますが、民間企業が営利目的で運営することには問題があります。今後、なし崩し的に、本来の「市民の憩いの場」という公園の目的が大きく損なわれる危険性があります。
今回の判決は「宗教」だったために辛うじて違憲と判断されましたが、これが宗教色の薄いものや、特定の政治思想や信条を示すものであったらどうなったか分かりません。
そのためには、公園の定義を明確にすべきです。
「公園」とは、公衆が憩いまたは遊びを楽しむために公開された場所(区域)で、まさに「公(おおやけ)の園」です。
最近流行の「民間委託」で、静かな公園でうるさいイベントがよく開かれていますが、これは本来の公園の定義から大きく逸脱していると思います。
こうした傾向が強くなれば、「何でもあり」で、いずれ、特定の政治思想や信条を示すものが、公園に設置されるかもしれません。行政はあくまでも管理運営を任されているだけに過ぎません。市民、国民のための憩いの場である公園を私物化する傾向は防がなくてはなりません。それでは次号で!