新着情報

【タックル法律講話】ふるさと納税訴訟、泉佐野市の訴え認めず! このままでは地方間競争で疲弊するだけ・・・ 制度設計自体に問題があったのでは?

2020/03/04

ふるさと納税訴訟、泉佐野市の訴え認めず!
このままでは地方間競争で疲弊するだけ・・・
制度設計自体に問題があったのでは?


返礼率が次第にエスカレート!

ふるさと納税をめぐり、「総務省が新制度から大阪府泉佐野市を除外したのは違法」として、泉佐野市が決定の取消しを求めた訴訟で、大阪高裁は、市の訴えを認めず、請求を棄却しました。
大阪高裁は、「これまでの過度な返礼品競争などの経緯を踏まえると、過去の実績を考慮し、参加自治体を指定する新制度は『総務相の裁量の範囲内』である」として、国側の主張を認めました。
平成20年に始まったふるさと納税制度。次第に返礼品競争が過熱し、事態を重く見た総務省が昨年6月に「返礼品は寄付額の3割以下」などの基準を設け、泉佐野市を含む4自治体を、高額な返礼品で多額の寄付を集めたことを理由に除外しました。泉佐野市は、返礼品に加えてアマゾンのギフト券を贈るキャンペーンも展開し、30年度には全国の寄付総額の約1割にあたる約497億円を集めていました。
そもそも、制度がスタートした頃は、寄付(納税)者は返礼品が目的ではなく、自分の故郷や縁がある地域、被災地の応援など目的だったと思います。それが徐々に、自治体が返礼品を豪華にして、できるだけ納税額を増やしたいとなり、エスカレートしていったのです。


「上から目線」の政策

こうした豪華品が出回ると、自分の自治体に納めるよりも、豪華で返礼率が高い自治体に税金を納めたいとなるのは当然です。そして、返礼品が過当競争になればなるほど、返礼品が貧弱な自治体からは納税者が逃げていくことになります。
つまり、結局は、自治体間で、民間企業のような価格競争が繰りひろげられているわけで、おかしな状態です。寄付を集めるために、返礼品を寄付額の8割にしても2割は自治体の財源になりますから、「やらないと損だ」と自治体がこぞって返礼品競争に走ることは予想できたはずです。
総務省はそうした事態になることを想定していなかったのでしょう。制度設計自体に問題があると思います。
「どうせ納税しなければならないのなら返礼率が高いところへ」と考えるのが当然で、納税する人は損はしません。寄付金集めに躍起にならない自治体が自動的に損をしてしまう構造になっています。本来の自治体が果たすべき役割とはかけ離れたことに血道を上げることになります。返礼率を3割に下げても、地方間競争は続きますから、最後は地方が疲弊することになりかねません。
国としては、地方交付税を地方に分配する立場として、「税収を増やしたいなら、自治体も自分自身で創意工夫しなさい」と、ふるさと納税制度を創設したのでしょうが、結局は、霞ヶ関の「上から目線」の政策であり、うまく行きませんよね。それでは次号で!