新着情報

【タックル法律講話】「過去の逮捕歴」のツイッター投稿の削除は認められない? インターネットの「忘れられる権利」が大きな問題となっています!

2020/08/03

「過去の逮捕歴」のツイッター投稿の削除は認められない?
インターネットの「忘れられる権利」が大きな問題となっています!


「忘れられる権利」

「過去の逮捕歴がツイッターで表示され続けるのはプライバシーの侵害だ」として、東北地方の男性が米ツイッター社に投稿の削除を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は、削除を命じた一審東京地裁判決を取り消し、「削除を認めない」とする男性側逆転敗訴の判決を言い渡しました。
男性は平成24年に建造物侵入容疑で逮捕され、罰金刑を受けました。実名報道された記事を引用したツイートが複数投稿され、就職活動に支障が出ていたといいます。
昨年10月の一審判決は、「ツイッターはグーグルのような情報流通基盤にはなっていない」として削除の要件を緩和し、「逮捕から期間が経過し、公表の公共性は相当減少している」として、男性の請求を認めていました。
この事件と同じような検索サイトのグーグルに残る過去の逮捕歴をめぐる訴訟で、最高裁は、平成29年、「プライバシー保護が情報公表の価値より明らかに優越する場合に限り、削除できる」と判断し、削除に厳格な基準を示していました。
今回の東京高裁の判断は、「ツイッターもグーグルと同じ情報流通基盤になっており、逮捕歴については、プライバシー保護が情報公表の価値より明らかに優越するとは言えないので、削除は認められない」と判断しました。
男性には酷な判決となりましたが、近年、このようなインターネット上での「忘れられる権利」は大きな問題となっています。罰金刑という軽い罪がいつまでもネット上に残っていては今後の人生に大きな支障を来すという男性の気持ちも分からないではありません。
一方で、採用時に犯歴を隠していたら、企業側は調べる必要があります。ただ、それは企業の防衛手段のためであって、グーグルやツイッターなどネットで誰でも、いつまでも検索できる状態に置くことは、プライバシー侵害の恐れもあると思います。


ルールが必要

逮捕されても有罪判決を受けるまでは「推定無罪」の原則ですから、犯罪者であるとは限りません。逮捕されても、その後、起訴猶予だったり、無罪であることもありますから、「逮捕」という事実だけがネット上で表示され続けることは、プライバシー上、大きな問題があると思います。
「逮捕されたらから、犯罪者だ!」と思い込んでしまう日本人の意識も変えないといけません。
ただ、一方で、殺人などの重大犯罪や性犯罪の情報は自己防衛の意味で「知りたい、知らせるべきだ」という公共性もあります。
したがって、犯罪の種類や経過年数などによって、例えば、罰金刑などの微罪に関しては何年か経過したら削除は認めるべき、などのルールを作るべきです。
今後も、ネット、SNSでのトラブルは多発するでしょうから、明確なルール作りが必要だと思います。それでは、次号で!