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【タックル法律講話】IR汚職で「証人等買収罪」で再逮捕! 「記憶にございません」が横行する日本の裁判を改めなければなりません

2020/10/08

IR汚職で「証人等買収罪」で再逮捕!
「記憶にございません」が横行する日本の裁判を改めなければなりません


新設された「証人等買収罪」

先日、IR(総合型リゾート)の汚職事件の被告人である衆議院議員の秋元司氏が「証人等買収罪」で再逮捕されましたね。
秋元氏らが、IR汚職事件の贈賄側である紺野昌彦に対し、捜査段階で供述した内容を覆すよう依頼し、見返りに現金を渡そうとしたという容疑です。
「証人等買収」は、テロ等準備罪とともに平成29年に施行された改正組織犯罪処罰法に新たに盛り込まれました。当時、日本では証人威迫罪や偽証を唆(そそのか)す偽証教唆罪はありましたが、現金など不当な利益提供を取り締まる法律はありませんでした。そこで、日本が署名している「国際組織犯罪防止条約」の締結に必要な法整備の一環として、「証人等買収」という犯罪類型が設けられたのです。
アメリカなど海外では、証人が宣誓したうえで偽証すれば重い刑罰が課されますが、日本では偽証罪に問われることはほとんどありません。日本の法廷での証言は軽んじられており、実際に証人威迫罪や偽証教唆罪で立件するのはかなり難しく、また、民事裁判においても偽証罪はありますが、立件された例はごくわずかです。

司法の権威を取り戻せ

どうして、日本ではこうしたことが起きるのか?
証人は一応宣誓はするのですが、それが形骸化しています。法廷で平気で嘘を吐けるのが、日本の裁判です。
実際、偽証を証明することは難しく、ロッキード事件で流行った「記憶にございません」というフレーズも裁判でもよく使われることがあります。 「あの人に会ったことがある」のに、「会ったことがない」と証言すれば偽証罪に問われますが、「記憶にない」と言えば偽証罪には問われません。
なぜなら、「偽証」とは、「客観的真実に反することを証言したこと」ではなく、「自分の記憶に反することを証言したこと」と定義されているからです。「記憶にあるか、ないか」を第三者が証明することは極めて困難です。それが「記憶にない」というマジックワードがまかり通っている理由です。
そんな中で、新設された「証人等買収罪」によって、虚偽の証言を依頼して対価として現金などの利益を提供したり、申し出たりすることを禁じたことは大きな前進だと思います。
この背景には、裁判員裁判の導入で、法廷での証言や供述に重点を置く「公判中心主義」が進んだことにより、捜査段階の取り調べ以上に、法廷での証言などが重視されていることも影響しています。
偽証は明らかに「裁判妨害」です。その偽証がこれまでまかり通っていた日本の裁判ですから、今回の秋元氏の立件は偽証を防ぐきっかけになる事件と言えますね。
裁判所や司法の権威を高めるためには、偽証罪の厳罰化とともに、偽証をさせない法整備を強化する必要があります。それでは次号で!