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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】ブルーリボンバッジ着用禁止 裁判所は見識を持て
2020/12/22
12月21日(月)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「ブルーリボンバッジ着用禁止 裁判所は見識を持て」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。
ブルーリボンバッジ着用禁止 裁判所は見識を持て
コロナ禍、安倍晋三首相の退陣、アメリカ大統領選…と日本を取り巻く状況は混沌(こんとん)としているが、忘れてはならないのは、北朝鮮による拉致問題である。被害者はいまだに帰国できず、ご家族の苦しみは筆舌に尽くしがたい。拉致問題の解決を願わない日本国民がいるだろうか。
その願いを象徴するのがブルーリボンバッジ。北朝鮮にいる拉致被害者と家族を結ぶ「空」と日本と北朝鮮を隔てる「日本海」の「青」をイメージしたバッジであり、歴代首相をはじめ、議員や市民も広く着用している。
ところが、大阪地方裁判所堺支部の民事訴訟において、裁判長が平成30年5月から今年7月までの間、当事者や傍聴人に対し、法廷内でのブルーリボンバッジの着用を禁止していた。
この訴訟は、在日韓国人の女性が職場で「民族差別表現」を含む資料を配られたとして、勤務先のフジ住宅株式会社に損害賠償を求めたもの。ヘイト防止を訴える缶バッジを着用した女性の支援者らが、フジ住宅の支援者がフジ住宅を象徴する「富士山と太陽」を描いた缶バッジを着用したことに反発したため、裁判長が「法廷警察権」により「相手に対する攻撃のメッセージ性がある」として双方に缶バッジの着用を禁止した。
さらに、女性の支援者らが、傍聴券取得のために並んでいたフジ住宅の支援者がブルーリボンバッジをつけていたことに反発し、「外せ」と要求。あろうことか、裁判長はこの要求を認めてブルーリボンバッジの着用を禁止し、法廷内のみならず、傍聴券取得のために並ぶ際の着用も認めなかったのである。
これに対して先月17日、ブルーリボンバッジを外すよう指示されたフジ住宅側の男性らが、「表現の自由」を認めた憲法に違反するとして、計390万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
「法廷警察権」は、法廷の秩序維持のために退廷命令や、その他必要な処置を命じることができる権限(裁判所法)であるが、その裁量の範囲は無制限ではない。大阪地裁堺支部は「個別の裁判体の訴訟指揮に関するもので、コメントすることはない」と木で鼻をくくったような回答しかしていないが、国家賠償訴訟となった以上、裁量権の範囲が争点となり、ブルーリボンバッジの着用を禁じた具体的かつ合理的な理由を説明しなくてはならない。
残念ながら、この裁判長は拉致問題やブルーリボンバッジについて、あまりにも不勉強・不見識であると言わざるを得ない。どう考えても、ブルーリボンバッジを着用していると法廷の秩序が維持できない、というのは論理の飛躍である。ブルーリボンバッジは拉致問題の解決を願うものであり、相手に対する攻撃のメッセージ性はなく、男性らも法廷の内外を問わず常日頃から着用していたものである。むしろ、ブルーリボンバッジの着用に対して、反発したり、異議を唱えたりする側に対してこそ自制を求めるべきである。
そもそも、18年公布の「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(北朝鮮人権侵害対処法)は、「北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、及びその抑止を図ること」を目的としたものであり、国や地方公共団体は「拉致問題を解決するため、最大限の努力」をし、「国民世論の啓発を図るよう努めるものとする」と定めている。
ブルーリボンバッジの着用は、まさにこの法の趣旨に沿うものであり、何ら政治的、攻撃的メッセージ性を持つものではない。
この点、今月7日に福岡県行橋市が、同市議会において、北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10~16日)に課長級以上の市職員がブルーリボンバッジを着用する方針を明らかにし、業務中の着用について「法的には問題がない」と答弁した。この答弁は、拉致問題に取り組んでいる市議の質問に対してなされたものであるが、地方議会における正式な答弁として意義があり、前述の国家賠償訴訟の原告らの後押しとなることを期待したい。
本来、このような国家賠償訴訟を起こさざるを得ないこと自体、拉致被害者のご家族や支援者にとっては本当に腹立たしいことであろう。裁判所によるブルーリボンバッジ着用の禁止は、あたかもブルーリボンバッジが何かセンシティブで混乱を招くものであるかのような誤った印象を国民に与えることになりかねない。裁判所は猛省すべきである。
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