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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】事件記録の廃棄 裁判所は猛省し再発防止を

2022/11/28

11月22日(火)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「事件記録の廃棄 裁判所は猛省し再発防止を」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

事件記録の廃棄 裁判所は猛省し再発防止を

先日、神戸家庭裁判所が平成9年に起きた神戸児童連続殺傷事件で逮捕された当時14歳の少年に関する全ての記録を廃棄していたことが判明した。同じく長崎家庭裁判所も16年に佐世保市で発生した小6女児殺害事件の全記録を廃棄していた。

いずれも全国的に大きく報道され、社会を震撼(しんかん)させた重大事件である。廃棄は裁判所の大失態と言わざるを得ない。

事件記録等保存規程では、少年事件の事件記録などの保存期間を「少年が26歳に達するまでの期間」と定めるとともに、「史料または参考資料となるべきものは保存期間満了の後も保存しなければならない」(特別保存)としている。最高裁の通達では「全国的に社会の耳目を集めた事件」、「少年非行等に関する調査研究の重要な参考資料になる事件」などはこの「特別保存」に該当し、永久的に保存するものとされている。

前述の各事件が「特別保存」の対象であることは明らかである。それにもかかわらず、家裁がこれらの事件記録を全て廃棄してしまったことは「法の番人」としてはあってはならない愚行である。事件記録は裁判所のものではなく、国民共有の財産であるという基本的な意識が欠如していたのではないか。

当初、最高裁は「廃棄の理由や当時の状況は不明であり、対応が適切だったか見解を述べることはできない」、「廃棄の経緯などを調査する予定はない」などと木で鼻をくくった対応に終始していた。政府も「裁判所における文書管理は裁判所の定めるルールに従ってなされるべきものであり、政府として答える立場にない」(松野官房長官)と述べるなど事の重大さを認識しているとは言い難い態度であった。

しかし、事件記録が廃棄されてしまうと、当然のことながら二度と検証・研究の対象とすることはできない。重大な少年事件の記録は少年の生育歴などのプライバシー情報を多く含むとともに、家裁での審理の在り方や今後の法改正の要否、被害者・遺族への支援の方策などを検討するきっかけとなる重要な歴史文書である。現行法ではすぐに公開されないとしても、永久保存によって後世に役立つ機会が確保される。

最高裁や政府の感覚は、あまりにも国民の感覚とずれている。

世論の批判を浴びて、ようやく最高裁は当時の神戸家裁の職員への聞き取り調査を開始し、11月25日には記録保存の運用が適切だったかを検証する有識者委員会の会合を開くこととした。

遅きに失した感はあるが、最高裁と家裁は猛省し、廃棄に至った詳細な経緯を調査するとともに、責任の所在を明らかにすべきである。最高裁は「特別保存」についてのガイドラインを策定し、保存状況を公表させるなどして再発防止策を早急に講じなくてはならない。また、国会において記録保存に関する法律を制定し、記録の保管スペースやデジタル化など制度面の対策も行うべきである。国民共有の財産が二度と安易に廃棄されないために。



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