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【タックル法律講話】部活動の指導は労働?長崎県の私立高で和解が成立。
部活動の問題は、公的支援、地域のバックアップが必要です。

2022/12/01

部活動の指導は労働?長崎県の私立高で和解が成立。
部活動の問題は、公的支援、地域のバックアップが必要です。


超勤手当はわずか月額14,000円

長崎県内の私立高に勤める50代の女性職員が、休日や放課後などの部活動の指導に対する未払いの時間外賃金約1,600万円の支払いを求めた訴訟で、先日、和解が成立しました。「指導時間は労働時間に当たる」として、学校側が解決金185万円の支払い義務があることを認めました。
訴状などによると、女性は平成7~12年と27年以降に運動部の顧問を務め、指導のほか、生徒を自宅に下宿させることもありましたが、割増賃金が支払われなかったと主張。学校側は「部活の指導は自主的、自発的なもの」として争っていました。所定の就業時間は午前8時25分~午後5時5分となっていましたが、平日は午前7時半ごろから朝練に参加。放課後は午後6~7時ごろまで練習を指導していました。
この女性職員は休日も生徒を指導し、私生活の時間をほとんど持てないにもかかわらず、超勤手当が月約14,000円しか支払われていなかったそうです。訴訟で女性側は、「学校は部活動強化で特色を出していた」と主張。「離島など遠方の選手を特待生として勧誘し、寮を完備しない学校に代わって自宅で選手を下宿させており、このことについて学校側の承諾を得ていたが、経済的支援がなかった」と訴えていました。


部活動への関わりはウィンウィンで

生徒側としては、未経験の先生に教わるリスクがあります。例えば、バレーボールを経験したことがない先生が顧問になると、指導方法がずれてなかなか大会で勝てないケースも多いでしょう。今はネット情報などで子供たちでも簡単に練習方法などの知識を得ることができますから、実績のない先生や生徒に尊敬されない先生は教えにくいと思います。顧問の先生は、朝練・放課後の練習に加え、試合では休日返上、と本当に大変だと思います。
私が中高校生の頃もそうでしたが、これまで部活動の運営は情熱のある先生に頼り切っていた側面がありますね。先生次第で指導内容に明らかな格差ができるわけですから、教育的観点からは、子どもたちの学ぶ機会の平等性が損なわれていたということにもなります。
そもそもスポーツは子どもの成長に重要な役割を果たしているのですから、部活動についても、専門的な人材が指導に当たるべきです。学校だけで子どもたちのスポーツを指導・支援するのには限界があり、これからは、プロコーチの派遣やスポーツ研修会などの公的支援や地域全体でのバックアップが必要となります。
こうした現状を受けて、スポーツ庁は公立中学校の運動部活動改革で、休日の中学校の部活動は2023年から段階的に民間スポーツ団体など地域移行し、2025年までに全国での地域移行を目指すことを提言しています。これは良い傾向ですね。
私が顧問弁護士を務める企業はすでに部活動支援に特化しており、全国で約1,000校の部活動(文化部も含む)の支援を受託し、プロコーチの派遣や研修会を実施しています。生徒・先生にとってもお互いに良いことですし、スポーツ選手のセカンドキャリア支援にもなります。部活動に関わる人たちがウィンウィンの関係になる仕組み作りが必要ですね。それでは次号で!