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【タックル法律講話】ジャニーズ事務所の性加害問題。
ジャニーズ一強とメディアの歪んだ姿が浮き彫りになりました。
「電波の公共性」を再認識すべきです。
2023/10/02
ジャニーズ事務所の性加害問題。
ジャニーズ一強とメディアの歪んだ姿が浮き彫りになりました。
「電波の公共性」を再認識すべきです。
事実認定の難しさ
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長(2019年に死去)による性加害問題はますます広がる気配を見せています。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のメンバーのうち9名が、ジャニーズ事務所からの謝罪や被害回復、再発防止策を定めることを求め、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てました。
申立書によると、いずれも中学生の時に初めて被害に遭ったといいます。不安や恐怖にさいなまれたうえ、ジャニー喜多川氏に嫌われるとスターになる夢がついえてしまうとの強迫観念から、性加害行為を拒むことなく耐え忍んだ、としています。
性加害は犯罪であり許されないことは言うまでもありませんが、今回の問題の難しいところは、加害者とされるジャニー喜多川氏がすでに亡くなっており、厳密な事実認定が困難な点です。再発防止特別チームが性加害を全面的に認めた報告書を公表しましたが、「死人に口なし」の中でどこまで厳密に事実が認定できるのか、疑問です。確かに「被害者」は多数いるのでしょうが、続々と「自分も被害を受けた」と申し出てきた人全てについてどのように事実を認定するのか、難しい問題です。「当事者の会」が「政府による救済や基金の創設を!」と訴えている構図にも何となく違和感を覚えます。
「ジャニーズ一強」が生んだ歪み
一方で、ジャニー喜多川氏の性加害についてはかなり以前から告発本や一部の週刊誌報道がありましたが、ほとんどのメディアはだんまりを決め込んでいました。それが今回、海外メディアであるイギリスBBCのドキュメンタリー番組によって事件が一気に表面化しました。これもおかしな話です。外圧に弱いという日本の国民性もさることながら、メディアがこぞって沈黙を続けていた背景には、ジャニーズ事務所の一強体制があります。
ジャニーズ事務所はメディアと強いつながりを持ち、メディアはジャニーズ事務所や所属タレントに関する好意的な報道を大々的に行い、イメージや売上げを損なうような報道をしないように忖度してきた、とも言われています。ジャニーズ事務所に不利な報道をしたり、ライバル歌手を出演させようとしたテレビ局に対して、ジャニー喜多川氏が所属タレントを引き揚げると圧力をかけたとの報道もあります。
このようにジャニーズ事務所はメディアに対して極めて強い影響力を持ち、メディアも機嫌を損ねることを恐れていたようです。
ジャニーズ一強の問題は2つあります。
1つは、ジャニーズ事務所所属のタレント以外を使わせないという圧力、これは独占禁止法に抵触する可能性があります。事実、2019年に公正取引委員会はジャニーズ事務所に注意処分を下しています。退所したSMAP元メンバー3人((稲垣吾郎氏、草彅剛氏、香取慎吾氏)の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合は同法違反につながる恐れがある、という内容です。3人のテレビ出演が激減する状況を踏まえて警鐘を鳴らしたのです。
もう1つはテレビそのものの問題です。どこのチャンネルにもジャニーズばかりという状況は異常ではないでしょうか。内容もバラエティやお笑い番組ばかり。テレビが「放映権」を濫用してやりたい放題に、一部のタレントばかりを出演させたり、偏った内容の番組作りをしたりしています。これは「電波の公共性」からして問題がありますね。放送法も含めて見直す時期に来ていると思います。それでは次号で!