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【タックル法律講話】露天商組合が「みかじめ料」の返還を求めて暴力団を提訴!
「フーテンの寅さん」が日本から消えてしまう?
2024/01/10
露天商組合が「みかじめ料」の返還を求めて暴力団を提訴!
「フーテンの寅さん」が日本から消えてしまう?
テキヤ(的屋)と暴力団
先日、愛知県豊橋市の露天商組合「愛知県東部街商協同組合」が暴力団山口組の二次団体「平井一家」に対し、支払ってきたみかじめ料など2020万6000円の損害賠償を求めて、名古屋地裁に提訴しました。露天商組合がこうした訴えを起こすのは「全国初」です。
露天商組合は、長年、祭りや縁日で出店する際、地元の「平井一家」にみかじめ料を支払ってきましたが、「祭礼などの売上げから違法に収奪された」と主張し、立証可能な約4年間のみかじめ料分の支払いを求めています。
もともと露天商は神社のお祭りに出店して商売する、いわゆる「テキヤ(的屋)」であり、「神農道」とも呼ばれます。神農とは中国神話の農業の神です。ほとんどの露天商は「売(ばい)」といってモノを売ることを生業にしていますので、暴力団とは関係はなく、全く別の存在でした。しかし、戦後、暴力団が多様化、広域化する中で、地方の一部の露天商を傘下に収めていったという歴史があります。そのため、テキヤも、「博徒」、「愚連隊」などと同じく、暴力団の起源の一つと位置付けられ、暴力団との密接さを指摘されてきました。
しかし、昨今の暴排の流れや、露天商組合が県公安委員会から暴力団排除条例に基づく組合名の公表処分を受けて出店先が制限されるなど、厳しい目が向けられたこもあり、ここに至って暴力団との関係遮断を決断したのです。
消えゆく日本の文化、伝統、風習
テキヤは日本の祭り文化を形成し、祭りを盛り上げる役割を担ってきた歴史的存在であることは事実です。しかし、暴力団対策法(暴対法)が施行され、暴排条例が各自治体で成立した今、こうしたテキヤと暴力団の付き合いは許されなくなり、何ごともクリーンで平等な祭りになりつつあります。社会全体を見ても、闇の部分を一掃し、歴史的なもの、異質なもの、理論的に説明がつかないものなどを徹底的に排除していく流れはますます加速しています。
元々、暴対法はバブル経済時代にアメリカの要請でできた法律です。一神教である欧米の二元論からすると、「神か、悪魔か」「正か、邪か」であり、日本のように、暴力団が白昼堂々と看板を掲げ、名刺を差し出し、表社会を闊歩するような状況は許されないのです。そこには日本の文化、伝統、風習が入り込む余地はなく、八百万神(やおろずのかみ)と呼ばれる日本古来の神道を理解することも難しいでしょう。
かつては盆と正月に上演され日本の風物詩的な映画だった「男はつらいよ」。主人公の「フーテンの寅」こと車寅次郎もテキヤでした。もちろん、暴力団ではありません。縁日で小気味い啖呵(たんか)売りの寅さんの口上が観られなくなって30年近く経ちますが、全てを「暴力団」でひとくくりにするのではなく、寅さんのような存在が消滅しない日本であってほしいものですね。今年もよろしくお願いします。それでは次号で!