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【タックル法律講話】パワハラを訴えたら、逆に、逮捕された!
自衛隊特有の「警務隊」とは?
自衛隊のガバナンスは大丈夫でしょうか?
2024/11/05
パワハラを訴えたら、逆に、逮捕された!
自衛隊特有の「警務隊」とは?
自衛隊のガバナンスは大丈夫でしょうか?
「警務隊」という存在
海上自衛隊で「上司からパワハラを受けた」と訴えた自衛官ら2人が、逆に、自衛隊の捜査機関である「警務隊」に虚偽告訴容疑で逮捕された事件。
2人は40代の自衛官と自衛隊横須賀病院に勤務していた20代の元自衛官(いずれも男性)。2022年1月、20代の元自衛官が勤務先の横須賀病院で当時の上司からパワハラを受けたと、40代の自衛官に相談、その後、パワハラを海上幕僚監部に報告したところ、同年9月、逆に、「警務隊」に虚偽告訴容疑で逮捕されてしまったのです。
しかし、検察庁は、同年11月、嫌疑不十分で不起訴処分としました。
その後、不起訴となった自衛官ら2人が、逮捕状などを自衛隊内のサイトに公開されプライバシーを侵害されたとして、220万円の国家賠償を求める訴訟を横浜地裁に提起しました。
訴状などによると、「警務隊」に逮捕されたのは違法だとして別の訴訟も起こしており、その訴訟で国側が提出した逮捕状や陳述書などが、海自職員が閲覧できる内部サイトに数か月ほど公開された、としています。
自衛隊が逮捕状などを内部サイトにアップしたのはあまりにも非常識です。仮に、組織内での見せしめの意図があったのなら、自衛隊内のガバナンスが問われます。
「警務隊」とは、自衛隊内部の専門警察で、犯罪捜査権を持つ特別司法警察署であり、戦前の憲兵のような存在です。
「上司からパワハラを受けた」と訴え出た被害者が、「それは嘘だ!」と言われて逮捕されてしまっていては、誰も怖くて組織内の不正や不祥事などを告発することはできませんね。組織にとって不都合な告発を握りつぶすことになりかねません。
自衛隊は不祥事続き
「警務隊」が自衛隊内で起きた事案を捜査するのは理解できますが、パワハラの申告を虚偽告訴の容疑で逮捕するのは、公益通報者保護法の精神にも反していますね。ましてや、その逮捕状を自衛隊内部のサイトにアップするなどもってのほかです。
自衛隊では、他にもセクハラや手当の不正受給など不祥事が続いています。
いくら軍隊に近い組織で厳しい規律が求められると言っても、組織内のもみ消しや陰湿な見せしめと疑われるような行為は厳に慎むべきです。
ただでさえ自衛隊を志望する人が減少しているのに、こんな状況では志願者がますます減るのではないかと心配です。自衛隊のガバナンスの再生が急務ですね。それでは次号で!