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【タックル法律講話】弁護士が裁判所の書類を破り捨てた?!
依頼者・被告人の利益を最大限に守ろうとする「闘う弁護士」と裁判所のバトル炸裂!

2025/09/01

弁護士が裁判所の書類を破り捨てた?!
依頼者・被告人の利益を最大限に守ろうとする「闘う弁護士」と裁判所のバトル炸裂!


公用文書毀棄(きき)罪に問われる

自身が担当している刑事事件を巡り、裁判所が保管する訴訟記録中の紙1枚を引き裂いたとして、公用文書毀棄(きき)罪に問われた弁護士の中道一政氏(44歳)の裁判で、大阪地裁は、「違法性は軽視できない」として、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
判決によると、中道弁護士が担当していた刑事事件が、公判期日の直前に裁判官の体調不良で取り消されることになり、こうした場合、弁護人の意見を聴く手続きが必要で、書記官から電話連絡を受けた中道弁護士は「被告人と接見してから述べる」と伝えましたが、書記官はこの電話での会話内容をもとに聴取書を作成。それを知った中道氏が「内容が虚偽だ」と怒って、その聴取書を破ってしまったというものです。
中道弁護士は、「聴取書には虚偽の内容が書かれており、破った影響も少なく刑事罰を科すべき違法性はない」と主張しました。
大阪地裁は、判決理由で、書記官の対応に問題はなかったとして、「憤慨する感情のまま短絡的に毀棄に及び、公の秩序を傷つけた」と指弾しました。


裁判所とのバトルは続く

裁判所が作成した聴取書を弁護士が破り捨てる、というのは私も聞いたことがありませんが、つい感情的になってしまったのではないかと思います
ただ、弁護士としては依頼者・被告人の利益や権利を最優先するのは当然で、中道弁護士が「被告人と接見してから述べる」と伝えたことは当然ともいえます。にもかかわらず、書記官がこれを無視して聴取書を作成してしまったので、ついカッとなってしまったのでしょうか。一方で、裁判所としても、権威を傷つけられた以上、黙っているわけにもいきません。
中道弁護士は、別の裁判で、裁判官の禁止命令を聞き入れずに法廷で自身のICレコーダーでの録音を続けたことで、法廷から強制的に退去させられています。中道弁護士によれば「刑事訴訟規則では裁判所の許可があれば録音できることになっており、これを正しく運用すればよいだけ。今後も依頼人が要望すれば録音を試みる」とのことです。
事の是非は別にして、依頼者・被告人の利益を最大限に守ろうとする姿勢は「闘う弁護士」とも言えると思います。「闘う弁護士」と裁判所のバトルはこれからも続きそうな気配ですね。それでは次号で!