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【タックル法律講話】借りたマンションを「隠れ組事務所」にした暴力団組長らに無罪判決!
「借りた後」なら騙したことにならない? 暴排の流れに一石を投じる判決です。

2026/02/02

借りたマンションを「隠れ組事務所」にした暴力団組長らに無罪判決!
「借りた後」なら騙したことにならない?
暴排の流れに一石を投じる判決です。


当初の契約時から「騙す意図」があったのか?が争点に

暴力団組事務所に使用する意図を隠してマンションを借りる行為は、「賃借権」という権利を騙し取ったということで「詐欺罪」に問われます。
しかし先日、大阪地裁で、暴力団組員の身分を隠してマンション2部屋の賃貸契約を結んだとして詐欺罪に問われた山口組系「兼一会」会長(73)と知人男性(72)に対し、無罪判決が言い渡されました。
マンションの一室を組員の待機所や荷物置き場といった「隠れ組事務所」として使っていたにもかかわらず、なぜ無罪となったのでしょうか?
検察側は、「山口組が特定抗争指定暴力団に指定され、同じエリアにある兼一会の組事務所の使用が制限されることに備えて、当初の契約時から、『隠れ組事務所』として使う意図があった」と主張しました。
しかし、裁判官は、組側が家賃を負担するようになったのが契約時から3カ月~1年あまりが過ぎてからだった点に注目し、「当初から『隠れ組事務所』として利用する目的があったと裏付ける証拠がない」と判断。また、知人男性の「最初は自分が賭け麻雀などに使う目的で借りたが、後から組員に頼まれて管理を任せることになった」という弁解を認めて、「事後的に組による利用が浮上した可能性を否定できない」と判断しました。
つまり、「借りた後」に使い道が変わったのであれば、当初の契約時にはオーナーを騙す意図はなかったということなので、詐欺罪の立証は難しいということです。例えば、うどん屋で食事をした後に「うっかり財布を忘れた」と言われた場合、最初から無銭飲食(詐欺)をするつもりで入店したと証明するのは困難ですよね。それと同じ理屈です。


刑事裁判の立証は厳格さが求められる

「疑わしきは被告人の利益に」というのが刑事裁判の原則ですから、この判決には一定の合理性はあると思います。
しかし、この判決からすると、一般人に賃貸借契約をさせて半年ほど寝かせ、当初は一般人が使用している実態を作り、後から徐々に組事務所化していく。このような手法をとれば、「借りる段階では騙すつもりはなかった」という言い訳が通用してしまう可能性もあります。
もちろん、組事務所として使用することはマンションの利用規約には違反していますので、民事訴訟を起こされれば退去を命じられることは間違いありません。しかし、「詐欺罪」で逮捕され有罪になるという刑事責任については、「犯罪の証明」が厳格に求められますから、捜査側によるより緻密な立証が求められます。
暴力団事務所の存在に恐怖を感じるオーナーや一般市民の感覚からすれば釈然としない部分は残ると思いますが、このあたりは今後の法整備の課題ではないでしょうか。それでは、まだ次号で!