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【タックル法律講話】「求刑が重過ぎた」と検察が異例の控訴! びっくりしたのは被告人? わざわざ控訴した理由が?

2017/11/06

「求刑が重過ぎた」と検察が異例の控訴!
びっくりしたのは被告人?
わざわざ控訴した理由が?


執行猶予がついたのに・・・

今年3月、東京地方裁判所が大麻取締法違反(所持)事件の被告人に言い渡した判決について、東京地方検察庁が「同様の事件と比べて求刑が重過ぎた」との理由で控訴していことがわかりました。求刑が重すぎたとの理由での控訴はきわめて異例です。私も聞いたことがありません。
第一審では、検察は、被告人に懲役1年6月を求刑し、地裁は「懲役1年6月、執行猶予3年」の判決を言い渡しました。
ところが、判決後、検察が過去の裁判例を調べ直したところ、「懲役1年6月の求刑は重過ぎた」と判断し、控訴したのです。第二審の東京高裁は、一審判決を破棄し、「懲役6月、執行猶予3年」としました。検察は、「不当な量刑だったため、判決の是正を求めて控訴した」と話しています。
恐らく、第一審では、被告人の弁護人も裁判官も、「執行猶予が付いているし、いいんじゃないの」ということで、量刑をしっかり見ずにやり過ごしたのでしょう。
大麻所持のような簡単で争いがない事件は、淡々と事務的に進み、判決もすぐに言い渡されます。弁護人も、裁判官も、あまり問題意識を持たずに、「執行猶予が付けばいいだろう」という感覚になりがちです。執行猶予がつけば、刑務所に行かなくて済むので、被告人もひと安心です。
それを、判決が出た後に、わざわざ検察が調べて、「求刑が重すぎた」と控訴したわけですから、異例のことです。そもそも、求刑に関しては、検察内部で当然幾つものチェックが入っているはずですから、何故そうなったのか、今一つ解せませんね。


被告人はいい迷惑?

いい迷惑なのは、被告人です。控訴されたら、出廷しなければならないし、弁護人をつけないといけませんから、費用も余分にかかります。求刑が重過ぎたというのは、あくまでも検察のミスです。検察のミスを修正するために開廷するのですから、税金の無駄使いでもあります。
「弁護人も判例をチェックしていなかったじゃないか」、「弁護士が気付いて被告人のために控訴すべきだったんじゃないか?」という批判もありますが、それは酷というものでしょう。弁護人としては、まずは執行猶予を勝ち取ることが重要ですからね。
それにしても、控訴までして量刑を修正した検察の意図はどこにあったのでしょう。変な前例を作りたくなかったのか?裁判官は求刑通りの判決を出して、被告人は不服がないからそのまま判決を受け入れていたわけですから、検察がわざわざ控訴して量刑を減らすのにどれだけの意味があるのでしょうか?
時代は変化しており、飲酒運転が厳罰化されたり、薬物使用の量刑も厳しくなっています。過去の判例がどうであれ、前例主義に拘りすぎるのも問題かもしれません。それでは次号で!