講演会等の情報

「行政対象暴力の実態と対策」暴力団排除担当職員研修会 2019/01/31

【講演のご報告】
1月31日、福岡県の暴力団排除担当職員研修会において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
「行政対象暴力の実態と対策」
~法に基づく健全な行政を実現するために~
 
暴力団やクレーマーに対して、われわれ一人一人はとても弱い存在です(性弱説)。だからこそ、連携・協力が大切であることをお話しさせていただきました。

【内容抜粋】
① アンケート等によれば行政対象暴力の件数は減少傾向にあると思われるが、現在も被害事例はなくなっている訳ではないことを改めて認識して頂く。
② 行政対象暴力に対して適切に対応することは公務員の責務であることを改めて自覚していただく。

第1 行政対象暴力とは何か
1 定義
2 不当要求かどうかの判断基準~行為主義
3 行政対象暴力の増加の背景
 ①  暴力団をはじめとする反社会的勢力の資金源の枯渇
 ②  社会問題化に伴う顕在化
 ③  権利意識の濫用(悪質なクレーマーの増加)

第2 問題の所在
1 行政における職務の特殊性 ~公正・中立性
2 行政対象暴力における被害者は誰か?
 ① 被害=不当に給付された金員、公務の公正・中立に対する信頼
 ② 被害者は公務員だけではなく、公務の公正・中立が失われることによる市民、県民、国民全体である。行政対象暴力は民主主義に対する破壊行為。
 ③ 行政被害者論の観点からだけでは対応できない。行政が加害者となりうるという認識を持つことが重要である。

第3 各地の事例
1 栃木県鹿沼事件
廃棄物処理の許可をめぐるトラブルが原因となり、市の環境対策部の参事(当時57歳)が、産廃業者から依頼を受けた暴力団らに拉致・殺害された。

2 高知県ヤミ融資事件
高知県の副知事、商工労働部の幹部らが縫製業協同組合に対して12億円を越える融資をしたが、融資に関して担保の調査もほとんどなく、事業についても融資の回収が可能か否かを何ら調査していなかった。副知事らは背任罪に問われた。

3 飛鳥会事件
大阪市開発公社が駐車場の管理業務を、長年にわたって同和関連団体「飛鳥会」に委託し、一定額のみ公社に納入させ、残りは全て団体側の収入となる不当な契約を結んでいたもの。被害額は億単位にのぼり代表者は業務上横領で逮捕された。

4 滝川市介護タクシー代不正請求事件
生活保護世帯の元暴力団夫婦、滝川市職員に対し、介護タクシー代を不正に請求し続け、2年足らずで約2億4000万円を支出させた事件。平成20年に夫婦は詐欺罪で実刑判決を受けた。その後、当時の市長ら市幹部5人の責任を追及する住民訴訟が提起された。

5 長崎市長射殺事件

第4 不当要求への対応策
1 不当要求行為者の手口(武器)
2 不当要求行為者の思考行動パターン
3 組織としての基本的心得 ~担当者の狐立化を防止すること
4 不当要求行為者に対する具体的な面談対応・電話対応
5 法的手段の選択
6 早期対応の重要性