民事介入暴力・不当要求対策
民事介入暴力とは?
民事介入暴力とは、民事事件において暴力団がその当事者もしくは関係者として介入し、相手方に対して組織の威力を背景に事件を有利に解決しようとしたり、不当要求したりする行為です。つまり民事に名を借りたユスリ、タカリで、「民暴」と呼称されることもあります。
平成4年3月から施行された「暴力団対策法」により、不当要求行為等は著しく減少しましたが、その反面、表向きは暴力団とは無関係であることを装った「暴力団フロント企業」を巧みに活用して経済活動に介入するようになってきています。
民事介入暴力(暴力団対策)・不当要求対策に取り組む理由
現在の民事介入暴力は、「広域化、大規模化、公然化、知能化」し、巧妙に経済活動に介入してきています。
民事に名を借りた理不尽な卑劣極まりない行為は、警察など公的機関とスクラムを組んで排除していかなければなりません。当事務所では、民事介入暴力は絶対に許さない!という思いで、その対策に取り組んでいます。
企業においては、コンプライアンス、予防法務の観点から、反社会的勢力排除のための組織づくりについてアドバイスさせていただきます。
講演実績(抜粋)
- 令和元年7月5日
◆暴力追放東区民大会において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「暴力団・反社会的勢力の実態と対策」 - 平成31年1月31日
◆福岡県の暴力団排除担当職員研修会において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「行政対象暴力の実態と対策~法に基づく健全な行政を実現するために~」 - 平成29年11月9日
◆第7回暴力追放福岡市民大会において、堀内恭彦弁護士が特別講演を行いました。
テーマ「暴力団対策の現状と未来 ~私たち市民にできることは何か~」 - 平成29年4月6日
◆福岡県運輸事業協同組合連合会において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「最近の暴力団・反社会的勢力の実態と対策~健全な企業経営を実現するために~」 - 平成29年1月31日
◆福岡県主催の「平成28年度・市町村暴力団排除担当職員研修会」において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「行政対象暴力の実態と対策~法に基づく健全な行政を実現するために~」 - 平成28年12月6日
◆福岡県暴追センター責任者講習において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「民事介入暴力の傾向と対策」 - 平成28年6月30日
◆ 「暴力団追放!地域決起会議(北九州地区)」において、堀内恭彦弁護士が講演を行いました。
テーマ 「暴力団対策の現状と未来~私たち市民にできることは何か~」
民事介入暴力への対策
- 相手の要求を見極める。そして、「会わない」、「入らせない」、「金を出さない」。
相手に屈しないこと、経済的メリットがないことを、早い段階で相手に分からせる。 - 警察、暴力追放運動推進センター、弁護士へ早期に相談する。
- 具体的留意点
⑴ 基本姿勢~「怖がらず、しかし、侮らず。」
⑵ クレーム担当者が応対し、トップは対応しない。
⑶ 複数で対応する。
⑷ 相手方の指定する場所で面談しない。
⑸ 相手の言い分をよく聞き、録音、メモで記録する。
⑹ 毅然たる態度で応対し、新たな約束、曖昧な返事をしない。
⑺ 絶対に「一筆」は書かない。
⑻ 相手を挑発する言動をしない。バカにしない。終始、丁寧な対応をする。
⑼ その者だけを優遇した取り扱いをしない。
⑽ 「不当要求防止責任者」制度の活用 - 対応の基本は「壊れたテープレコーダー」
同じ回答を、淡々と、何度でも、繰り返す。
民事介入暴力に対する法的手段の選択
- 弁護士による警告、通知(内容証明郵便など) ~9割方はこれで解決!
- 仮処分の活用
⑴ 架電禁止、面談禁止、立入禁止
⑵ 街宣行為、業務妨害行為禁止 - 裁判所の活用
⑴ 債務不存在確認訴訟
「原告の被告に対する金●●円の債務が存在しないことを確認する」
⑵ 損害賠償請求訴訟
⑶ 調停(話し合い) - 警察による対応
⑴ 被害届、告訴の活用:強要、脅迫、恐喝、業務妨害、住居侵入、不動産侵奪
⑵ 暴力団対策法による中止命令
相談事例
- 管理物件のマンションの1室を一般の人に賃貸していましたが、いつの間にか暴力団関係者が出入りし、組事務所のように使用されています。退去してほしいのですが、どうしたらいいでしょうか?
- 対応方法
- 賃借権の無断譲渡・無断転貸で契約解除をすることができます。
組事務所として使用されている場合は、マンションの使用目的違反(居住用を事務所として使用しているため)でも契約解除が可能です。
これにより、明渡訴訟の提起等で、暴力団関係者を退去させることができます。
今後の防衛策として、賃貸借契約書に暴力団排除条項を加えることが重要です。
- 飲食店を経営していますが、暴力団関係者と思われる客が「食事した翌日に食中毒でひどい目に遭った!」と怒鳴り込んできました。「申し訳ありません」と謝罪したところ「どうしたらよいか考えておけ!」と言って出ていきました。その客以外に、そのような苦情はないので、因縁をつけられているのだと思います。どうしたらよいでしょうか?
- 対応方法
- まずは事実の確認が必要です。来店日の確認、同席者がいた場合は、同席者の体調、病院での診察の有無、診断書の有無を確認し、本当に食中毒なのか確認します。簡単に金銭的な解決をすると、今後も金銭を要求される可能性がありますので、慎重に対応してください。相手が金銭的な賠償をするよう脅迫的な行為に出るようであれば、すぐに警察に相談してください。
- 建設現場で、工事案内板が公道に少しはみ出ていていたため、それにぶつかって車に傷がついたと、現場担当者が車の修理代を請求されました。現場担当者は、相手から求められるまま損害賠償する内容の念書を作り、署名押印してしまいました。
後日、相手から損害賠償額として100万円以上の請求がありました。車には少し傷がついた程度でしたので法外な請求だと思います。どうしたらよいでしょうか? - 対応方法
- まずは、最初に修理代を請求された時点で、現場の状況、車の傷、車の所有者などの事実確認をするべきでした。
後日の請求に対しても、同様に事実確認を行い、どの程度支払いをするか交渉することになります。相手が脅迫的な行為に出るようであれば、すぐに警察に相談してください。
- 交通事故加害者となり任意保険未加入だったため、人身事故は自賠責保険で物損は自分で支払いをする内容で相手方と話をしました。物損の示談金額になると、金額がどんどん膨れあがり、こちら側の話は全く聞いてもらえず、自宅に来て、支払うよう大声を出して要求します。どうすればよいでしょうか?
- 対応方法
- 弁護士に依頼して示談交渉代理人になってもらい、直接本人に連絡しないよう通知を出してもらうと、ある程度の抑制効果があると思われます。それでも、なお自宅に来て迷惑になるようであれば、警察を呼んでください。自宅に上がり込むようであれば、住居侵入罪になります。
- 飲食店を経営しており、店舗の清掃業務をA社に委託しています。A社とは数年前に契約しており、当初は問題なかったのですが、最近、近隣店舗に迷惑な場所に駐車するなどして苦情が出るようになりました。A社を調べたところ、代表者が暴力団関係者に代わったことが判明しました。大事に至る前に契約を解除したいと思っていますが、どのようにしたらよいでしょうか?なお、契約書に契約期間の定めはありません。
- 対応方法
- 契約書に契約期間に定めがない場合は、当事者はいつでも解約の申し入れができます。また、解約の理由を相手方に示す必要もありません。解約理由を暴力団関係企業のためとすると、かえって解約に抵抗する理由を与えることになりかねませんので注意してください。
今後の防衛策として、取引約款や取引基本契約上に暴力団排除条項を設けることが重要です。